アコギな雑感

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香川うどん論争が勃発したらしい件

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9月中旬、『麺通団団長「気分が悪い」、「丸亀製麺」めぐり〝香川うどん論争〟が勃発』というYahoo!ニュースが掲載されました。まあ、その界隈で以前からくすぶっていた不満がワッと記事になり、追っかけ記事も出ています、という話。

麺通団団長「気分が悪い」、「丸亀製麺」めぐり“香川うどん論争”が勃発(AbemaTIMES) - Yahoo!ニュース

まず、論争に口火を切ったかたちの麺通団団長・田尾和俊さん(四国学院大学)は、タウン情報誌の編集長時代に「ゲリラうどん通ごっこ(単行本化の際に『恐るべきさぬきうどん』に改称)」のコラム連載を始め、平成4年頃から続く「讃岐うどん巡礼」ブームの火付け役になります。このあたりの顛末が映画「UDON」(2006)の元ネタになってます。

麺通団それ自体は、その後、讃岐うどんを全国に知らしめるうどん店として企業展開していますから、当初の「うどん好きが集まった客のプロ集団」とは変容しています。問題はその公式ブログの団長日記(2019年9月14日記事)に、「丸亀製麺讃岐うどんの歴史を間違って発信している」とする記事が掲載されたのです。

麺通団公式ウェブサイト

田尾さんは丸亀製麺の業態モデルはどちらかというと肯定的に捉えているので、別に全否定しているわけではないのよ。ただ、一時低迷した集客の起爆剤として「ここのうどんは生きている」などというコピーで、「各店舗での製麺だから美味い」というイメージを押しつけ始めた。

田尾さんとしては、素人が各店舗で機械的に作るなら、優秀な職人がセントラルキッチンで作る方が美味い、という論理で正面衝突したんですね。『秘密のケンミンSHOW』や『チコちゃんに叱られる』が相次いで放送した間違った讃岐うどんの歴史についても、丸亀製麺のロジックが原因の一つと指摘している。

で、丸亀製麺に良い感情を持っていなかった県民が、別の文脈で文句を言い始めた(もしくはマスコミが香川県民vs丸亀製麺という対立構造を作った)。要するに、丸亀製麺香川県とは全く関係が無いのに、〝さぬき〟を謳って商売しているのは倫理的にどうなんか、という根本的な感情が吹き出して、話題がすり替えられてしまったんです。

比較的冷静に報じた日経ビジネスの記事も、やっぱり「香川と関係ないから県民に嫌われている丸亀製麺だが、意外に丸亀市は怒っていない」という話になっていて、田尾さんの議論とは別次元の報道になっている。

丸亀製麺巡る論争、地元組合は「問題は同社以下のうどんが多いこと」:日経ビジネス電子版

県民vs丸亀製麺の路線で報じる記事はやっぱり作りやすいし、破竹の勢いの企業にツッコみやすいもんね。と、いうことで、まとめサイトまで出来る始末。

ネットで注目!「丸亀製麺」めぐる“香川うどん論争”に様々な声 - NAVER まとめ

僕としては、派生してしまった県民レベルの感情論と田尾さんが問題にしている「企業ロジックを正当化するために歴史が書き換えられる」ことへの問題は、キッチリと切り分けて論じるべき、というスタンスです。

田尾さんは「自分たちがブームを作った、というのはおこがましいので、基本的には黙っていたんだが、ブームから20年以上経過すると歪曲して伝える人たちが現れ、そのうち間違った歴史が本当になってしまいそうだ」として、「さぬきうどん未来遺産プロジェクト」を2015年から立ち上げている。お店や職人に地道なインタビューをおこなって、証言をアーカイブ化しようというもの。バックアップしているのは、高松市に一号店がある「はなまるうどん」で、このあたりが丸亀製麺と競合する所以でもあるんですが、やっていることは至極まっとうだなと感じます。

www.sanukiudon-mirai.jp