アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

霊感は感染する、という体験

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納涼企画ってことで。
だいたい、僕が気にくわないのは「知り合いが体験した」という怖い話。
うそだろ、それ。作り話だろ。しかも、不思議な体験にはそうそうオチなんてつかない。
だから、僕が体験したことを書きますけど、オチなんてないから。期待しないでよ。

大学1年の7月、「1年合宿」と称して美術講座の新入生が島の民宿で合宿をはった。
2泊3日の合宿は、一応、風景デッサンの課題制作という名目はあったが、新入生同士の
親睦を深めるというのがそもそもの目的。
新入生は9人ほどだが、出会って3ヶ月ほどだから、互いに何者なのかよくわからん。
そういう距離をすこしでも縮めようっつー講座の伝統行事なんですな。

場所はね、どこまで書いて良いのかな…、香川県の沖にある小さな島。
最寄りの「詫間」っていう港から、一日数便の連絡船が出る。
あんまり綺麗じゃない民宿がこの伝統行事の定宿で、母屋に管理人の夫婦が住んでいる。
僕たちは「離れ」に貸しきりで、台所を使って自炊する。「離れ」の南は人ひとりが通れるほどの
小道を挟んで林になっている。「離れ」の北は、窓を開けるとコンクリートの堤防で、
そのまま浜辺に出て海水浴が楽しめる、という構造である。

実は、夕食前に日が暮れた海で足を切った「Mさん足切り事件」やら、夕食後の花火大会で
誰かが女子の背中を撫でた「霊かN君によるオサワリ事件」という、くだらん伏線もあったのだが、
そんなことはどうでもよい。

この夜、ちょうど台風が接近するため、深夜0時を過ぎた頃から雨が降り始めた。
雨はまだたいしたこともなく僕たちは窓を開け、扇風機を回していた。
そして、川の字に布団を並べ、誰と誰がくっついたといったしょうもない話を延々と繰り返していた。
最初からそんな恋話に興味のないMさんは、皆の布団から少しだけ距離を開けて、北の窓ぎわで眠りにつく。

1時をまわった頃、Mさんが皆に訴えた。

M「なぁ、扇風機がしゃべりよる(しゃべっている、の讃岐弁)」

え~と、ある意味、じゅうぶん怖いんですけど、Mさんが。
「消してもええで、扇風機」と誰かが言って、Mさんは扇風機を消して眠りにつく。

M「なぁ、やっぱり外から声がする」
僕「どんな声?」
M「…おじさんの声」
僕「ほな、窓閉めてええで」

僕はこのMさん、きっと本当にいっちゃってる子だと思いました。
結局、全ての窓を閉め、恋話に夢中になっていると、Mさんがいうのだ。

M「声がするよ」
N「何ていいよん?」
M「魚いっぱいとれたよ、おいしいよって声がする」
皆「………。」

僕「Mさん、そろそろみんな寝るけん、こっちにおいで」

こうして、みんなの間に布団をひいたMさんをおもって、静か~になって就寝体制に入ったのだった。
さぁ~~~~~~~~と雨の音が聞こえる。屋根に落ちる雨音に意識を向けたとき。

「もごもごもご、もごもごもご」

僕は、天井から声のような音を確かに聞いた。あれ、今の人の声っぽかったなと思った瞬間、

M「聞・い・た・ろぉ~~~今のぉ~~~」(訳:今の聞いたでしょ!?)
皆「うぎゃぁあああーー」

と大騒ぎになって、布団をかぶって寝てしまったのですた。
この出来事から、僕はちょびっとだけ不思議な体験をする人になったのだ。