腰を抜かした人を見た
ドラマなんかで「こ、腰がぬけたぁ~」というシーンを見かけることはあっても、
なかなか日常生活で腰を抜かした人に出会うことはない。
ちなみにギックリ腰は、椎間板ヘルニアが疑われる腰椎の捻挫のようなもので、
「腰が抜けた」ものではない。
今回は、僕の友人が怖さのあまり腰を抜かした話をしよう。
●
夏休みも終わる頃、大学院の研究室に6人ほどの院生が集まって、怖い話に興じていた。
僕のようなオチ話系怪談ばかりではなく、マジっぽい話も多い。
ついでだから一つ取り上げてみようか? 僕自身の体験じゃないから信じるのは自己責任でね。
美術の学生Aちゃんは「見える」という話。
AちゃんとK君は、徹夜で印刷の課題をこなし、すがすがしい朝を迎えていた。
熱いコーヒーをすすりながら外を眺めている。
この時間、芸術学群棟の前は中央通りのようになっている。
宿舎からの学生が一斉に自転車を走らせ、さながら「北京」の通勤ラッシュだ。
Aちゃんが、K君に言った。
A「あそこにね、幽霊がおるわ」
K「どこ? 朝っぱらに?」
A「道の真ん中」
Kは全く見えなかった。その時、一台の自転車が道の真ん中で急ブレーキをかけた。
A「あ、あの人も見えるらしいわ」
●
と、まあ、こんな話をやっていたわけ。夜も更けてきたし、晩飯もまだだったので、
ファミレスにでも行こうという話になって、移動開始。
マイ・カローラに乗り合うことになったのだが、Uさんが工房裏に止めてある自分の車に
財布をおいているというので、とりあえずそこへ車をまわした。
いまでこそ芸術棟工房裏には、近未来的な研究棟が建っていて明るいそうだが、
当時は真っ暗な場所に林と大きな沼があった。
Uさんはその沼のほとりにある駐車場の一番奥に車を止めていた。
指定された場所にマイ・カローラを進めると、ヘッドライトにUさんが映った。
いつもは気性の激しいUさんが、ヘッドライトの正面で、ガクッとくずれた。
●
僕「ど、どした~」
U「き、来て、向こう、女の声が」
車を止めて院生数人が駆け寄った。Uさんはアワアワしていてよくわからんのだが、
駐車場の奥、林と沼の暗闇を指さしている。
U「う~~るぁ~~~~~っていう女の声がぁ~~」
Uさん、半泣きである。その時、僕は我が目を疑った。他の院生達も後ずさる。
林の奥の暗闇から、女らしきものが飛び出てきたのだ!!
U「どはっ」
僕「うわっ」
他「むはっ」
すわ、幽霊か!?と怪談話を終えたばかりの僕たち誰もが思った。
んが、その女らしきものは、明らかに女子学生で、
顔を伏せてはずかしそうに駆け去っていった。
僕「あの子が歌ってたんじゃねーの」
●
暗闇の沼のほとりで、ソプラノ歌ってる女子学生もどうかと思うが、
そんなに都合良く怖いことは起きませんぜ、Uさん。
ところが、Uさん。立てなくなってしまい、アパートに強制送還いたしました。
すごいのな、腰抜けるって。ほんとに腰から下が動かない。
金縛りより腰抜けるほうが、こえーよ。
なかなか日常生活で腰を抜かした人に出会うことはない。
ちなみにギックリ腰は、椎間板ヘルニアが疑われる腰椎の捻挫のようなもので、
「腰が抜けた」ものではない。
今回は、僕の友人が怖さのあまり腰を抜かした話をしよう。
●
夏休みも終わる頃、大学院の研究室に6人ほどの院生が集まって、怖い話に興じていた。
僕のようなオチ話系怪談ばかりではなく、マジっぽい話も多い。
ついでだから一つ取り上げてみようか? 僕自身の体験じゃないから信じるのは自己責任でね。
美術の学生Aちゃんは「見える」という話。
AちゃんとK君は、徹夜で印刷の課題をこなし、すがすがしい朝を迎えていた。
熱いコーヒーをすすりながら外を眺めている。
この時間、芸術学群棟の前は中央通りのようになっている。
宿舎からの学生が一斉に自転車を走らせ、さながら「北京」の通勤ラッシュだ。
Aちゃんが、K君に言った。
A「あそこにね、幽霊がおるわ」
K「どこ? 朝っぱらに?」
A「道の真ん中」
Kは全く見えなかった。その時、一台の自転車が道の真ん中で急ブレーキをかけた。
A「あ、あの人も見えるらしいわ」
●
と、まあ、こんな話をやっていたわけ。夜も更けてきたし、晩飯もまだだったので、
ファミレスにでも行こうという話になって、移動開始。
マイ・カローラに乗り合うことになったのだが、Uさんが工房裏に止めてある自分の車に
財布をおいているというので、とりあえずそこへ車をまわした。
いまでこそ芸術棟工房裏には、近未来的な研究棟が建っていて明るいそうだが、
当時は真っ暗な場所に林と大きな沼があった。
Uさんはその沼のほとりにある駐車場の一番奥に車を止めていた。
指定された場所にマイ・カローラを進めると、ヘッドライトにUさんが映った。
いつもは気性の激しいUさんが、ヘッドライトの正面で、ガクッとくずれた。
●
僕「ど、どした~」
U「き、来て、向こう、女の声が」
車を止めて院生数人が駆け寄った。Uさんはアワアワしていてよくわからんのだが、
駐車場の奥、林と沼の暗闇を指さしている。
U「う~~るぁ~~~~~っていう女の声がぁ~~」
Uさん、半泣きである。その時、僕は我が目を疑った。他の院生達も後ずさる。
林の奥の暗闇から、女らしきものが飛び出てきたのだ!!
U「どはっ」
僕「うわっ」
他「むはっ」
すわ、幽霊か!?と怪談話を終えたばかりの僕たち誰もが思った。
んが、その女らしきものは、明らかに女子学生で、
顔を伏せてはずかしそうに駆け去っていった。
僕「あの子が歌ってたんじゃねーの」
●
暗闇の沼のほとりで、ソプラノ歌ってる女子学生もどうかと思うが、
そんなに都合良く怖いことは起きませんぜ、Uさん。
ところが、Uさん。立てなくなってしまい、アパートに強制送還いたしました。
すごいのな、腰抜けるって。ほんとに腰から下が動かない。
金縛りより腰抜けるほうが、こえーよ。