誰かが死ぬ予感
今回の話は、たぶん心霊現象ではなくて、第六感とか野性的感覚といったほうが
納得できる体験だと思う。これまで、基本的には真面目に体験談を記しているのだが、
根っから芸人体質なので、笑い話におとしてしまっているようだ。
そんななかでも、今回はわりとマジだぜ。
●
大学4年生のある日の夕刻、僕は予感にとらわれていた。
事の起こりといえば、いつもはストイックで学生には厳しい僕の指導教官が、
その日の午後から異様に優しくて、普段は絶対に見せない教官の研究業績や、
高価な製図道具をくれるなどというありえない状況が思い当たる。
うれしかったり、持ち上げられて恥ずかしかったりするときに、
胸の上のあたりが重くなるというか、胸が詰まるって状態になるよね。
最初はそういう状態だったんだよ。
だから、指導教官が優しくて、僕はのぼせちゃったんだろうと思っていた。
●
ところが、教官が帰宅して、後輩達と近くの喫茶で夕食をすませた7時頃、
何かに急かされる感覚、自分が何かしなけりゃいけないという思いに変化した。
その感覚は、いつのまにか「誰かが死ぬ」という予感になった。
こんな感覚を覚えたのは初めてだった。
このときの焦りや、いてもたってもいられないという思いは、きわめて漠然としたものなのだが、
「誰かが死ぬ」ということだけは、もう決まっている事実のように思われた。
●
午後10時頃、僕は実家に電話した。
誰かが死ぬよ、なんつー縁起でもない電話をするのも気が引けるので、
「みんな、元気? 調子の悪い人、おらんか?」というのが精一杯だった。
電話のついでに翌日は朝一の授業だったので、
おかんに午前8時に電話して起こしてくれるよう頼んだ。
●
朝、電話の音で目が覚めた。めずらしく妹だった。
妹「兄ちゃん、起きた?」
僕「ああ」
妹「あのな、婆ちゃんが今朝の4時頃死んだじゃ。かあちゃんはもう行っとるけど、
明後日お葬式じゃけん、帰ってきてな」
僕「ああ」
昨日の予感から考えれば、えらくショッキングな電話だったはずだが、
僕にはふつうのことに思えた。婆ちゃんだったのか、と納得した。
●
僕が予感にとらわれていた頃、婆ちゃんはピンピンしていた。
夜中の2時頃に心臓の発作が起きて、ニトロ系の薬がどうしても見つからず、
搬送先の病院で亡くなった。だから婆ちゃんの幽霊が別れを言いに来たとかいう話とは違う。
虫の知らせ、というのかな。結構、ハッキリした感覚でしたよ。
納得できる体験だと思う。これまで、基本的には真面目に体験談を記しているのだが、
根っから芸人体質なので、笑い話におとしてしまっているようだ。
そんななかでも、今回はわりとマジだぜ。
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大学4年生のある日の夕刻、僕は予感にとらわれていた。
事の起こりといえば、いつもはストイックで学生には厳しい僕の指導教官が、
その日の午後から異様に優しくて、普段は絶対に見せない教官の研究業績や、
高価な製図道具をくれるなどというありえない状況が思い当たる。
うれしかったり、持ち上げられて恥ずかしかったりするときに、
胸の上のあたりが重くなるというか、胸が詰まるって状態になるよね。
最初はそういう状態だったんだよ。
だから、指導教官が優しくて、僕はのぼせちゃったんだろうと思っていた。
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ところが、教官が帰宅して、後輩達と近くの喫茶で夕食をすませた7時頃、
何かに急かされる感覚、自分が何かしなけりゃいけないという思いに変化した。
その感覚は、いつのまにか「誰かが死ぬ」という予感になった。
こんな感覚を覚えたのは初めてだった。
このときの焦りや、いてもたってもいられないという思いは、きわめて漠然としたものなのだが、
「誰かが死ぬ」ということだけは、もう決まっている事実のように思われた。
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午後10時頃、僕は実家に電話した。
誰かが死ぬよ、なんつー縁起でもない電話をするのも気が引けるので、
「みんな、元気? 調子の悪い人、おらんか?」というのが精一杯だった。
電話のついでに翌日は朝一の授業だったので、
おかんに午前8時に電話して起こしてくれるよう頼んだ。
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朝、電話の音で目が覚めた。めずらしく妹だった。
妹「兄ちゃん、起きた?」
僕「ああ」
妹「あのな、婆ちゃんが今朝の4時頃死んだじゃ。かあちゃんはもう行っとるけど、
明後日お葬式じゃけん、帰ってきてな」
僕「ああ」
昨日の予感から考えれば、えらくショッキングな電話だったはずだが、
僕にはふつうのことに思えた。婆ちゃんだったのか、と納得した。
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僕が予感にとらわれていた頃、婆ちゃんはピンピンしていた。
夜中の2時頃に心臓の発作が起きて、ニトロ系の薬がどうしても見つからず、
搬送先の病院で亡くなった。だから婆ちゃんの幽霊が別れを言いに来たとかいう話とは違う。
虫の知らせ、というのかな。結構、ハッキリした感覚でしたよ。