アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

宇高連絡船のうどん

生粋の讃岐人でうどん好きの嫁さんには、頭が上がらない。うんちくをたれても「その程度の経験ではまだまだやの」のひとことでノックアウトである。まあの、香川の文化は県外者から見れば特殊すぎるけん、なかなか本質のところが理解できん。だってさ、うちの嫁さん、昭和42年生まれなのに給食で「脱脂粉乳」が出た言うんやで、脱脂粉乳香川県はいったいいつまで戦後を引きずってたんじゃ?

で、そんな僕が唯一嫁に勝てるのは、「宇高連絡船のうどん」を食べたことがある、ということである。

恐るべきさぬきうどん』やら映画『UDON』で象徴的に語られる宇高連絡船のうどん。瀬戸大橋が開通するまで岡山県宇野港香川県高松港を結んだ連絡船、その甲板で供される何の変哲もない、いや、むしろ給食のビニール袋入りの麺と同じような、いただけないうどんである。

僕が最初に食べたのは、おかんの職場旅行で香川県屋島を訪れた時だったと思う。小学4年くらいだったので記憶は曖昧なんだけど、買い食いや外食が極端に禁じられた家庭だったので(貧乏だったから)、甲板で買ってもらったうどんがすごく嬉しかったなぁ。次が、大学受験で香川入りした時。その甲板で、今度は自分の財布から小銭を出してうどんを買う。どのみち一人暮らしが始まる、大人になるんだなぁ~みたいな。

その後もしばらくは連絡船だったから、乗れば食べてた。夏から秋にかけての印象が強くて。クラッとするような潮の香りと、ディーゼルの油の臭い。甲板のうえは強い向かい風。後ろに遠ざかる白い波と島々。夕暮れ時だったりすると、ほんと海も空も島々も赤く染まってて、グッとくるんよね。たそがれ、さすらい、旅情みたいな。おいていくもの、忘れたいこと。そこに「うどん」があるわけよ。

うどんをズルズル喰いながら「ひたる」わけよ、わかる?

ま、横で見てれば「うどん喰って、なにをさすらっとんじゃ」ってツッコム場面だが、それがまた讃岐的なんだな。そんな感じです、宇高連絡船のうどんは。

橋ができて便利になったけど、宇高国道フェリーでゆったり移動するのも悪くないよ。今はどうなってるんかよくわからんが、船内の売店は採算が合わんでやめてるみたいで、うどんは喰えんな。ポットとカップうどんで疑似体験してみるのもええんちゃう?

※↑調べたら食えるみたいです、うどん。ぜひ天気が良い時に試してちょうだい。