アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

飲食店を「認定」する愚かさ

あほうらしい。昨日の「とくダネ!」でも取り上げられた「佐世保バーガー」の認定制度。

ハンバーガー伝来の地を売り物にして全国的に有名になった「佐世保バーガー」の味を守ろうと、長崎県佐世保市佐世保バーガー認定委員会ができた。ブームで新規店が乱立するなか、「本物」にお墨付きを与えるのが狙いだ。だが、それぞれのバーガーにこだわりがある店側には「素人が味を評価できるのか」との反発もあり、当面は味の良しあしにまでは踏み込まない方針だ。(asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0119/005.html

新規店の阻止がねらいではなく、観光が目的だという。飲食店を「認定」する愚行のあらましはこうだ。

ブームに乗って新規店が乱立。並んで食べたのに美味しくない、接客がよくないという観光客の声が聞かれるようになる。佐世保観光コンベンション協会が「覆面捜査官」を使って味や接客を覆面審査しようと画策。新規店から反発が相次ぎ頓挫。地域ブランドとして商標登録する荒技に出ようとするも店主達の理解が得られず断念。なんとか「認定制」にこぎつけるも、あえて明確な定義は避ける。

結局、佐世保観光コンベンション協会が定めた佐世保バーガーの定義は「手作りでこだわりのあるメイドイン佐世保ハンバーガー」なのだそうだ。(佐世保観光コンベンション協会/佐世保バーガー認定制度)
http://www.sasebo99.com/sight_sasebo/bgnintei.shtml

なんやねん、それ。恥ずかしい「あらすじ」を僕は想像しちゃうんだけど。

最初は、あきらかに佐世保バーガー老舗店の事業主が、乱立する新規店にハードルをつくりたかったんやろ。そんで観光協会にねじ込んで、観光問題にしてしまった。だってさ、ブームの便乗だろうがなんだろうが、飲食店の開業自体は真っ当な経済活動なわけだし、旨い店もあればまずい店が出てくるのも当然のこと。そもそも観光とは相容れない問題なんですよ。

讃岐うどんだって全国区で名前が出てくる店は多くて100店舗。それでも800軒を越える総数から考えれば、わざわざ県外から出向くほどの店ではないところのほうが多いんである。だからといって「まずい店は観光の邪魔。さぬきうどんとは認定せんので、客足が遠のいて早いこと潰れてください」みたいなこと、しないだろ。むしろ「讃岐うどんといってもいろいろあるから食べてみて」ってなもんで、ほんまにまずい店は消えてますがな。

新規参入を警戒する老舗店がブランドの「味と信用」を維持したいと訴えることには一理ある。だけど、その論理に欠如しているのは、制度にあぐらをかくはずの認定店や認定老舗店の「質」が落ちたらどうするの?という問題である。本人達にその意識はなくても、認定制度を設けることは権力構造をつくることと裏表の関係であり、観光や地域が活性化することとは全く逆の状況を生むのである。

言い出しっぺの老舗店の質が落ちた時、だれが首にスズをつけるの?

誰も出来ないなら、認定なんて最初から眉ツバだと言ってるようなモンです。だいたい認定店に観光客が行って「まずい」って言われたら終わりなんだぜ。今までは「店の信用」だけで済んでたけど、今後は「認定店」の信用問題になるんだよ。

観光協会も途中であきらめる勇気もないもんだから、結局、定義も曖昧、味は問わない、だから許して的な府抜けた認定制度になってる。外から丸見えになってる愚行に恥ずかしいとは思わないのかな。