アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

なんでも美味しいY君

デザイン制作会社に同期で入社したY君は、ほんとうに良いヤツだ。

ピュアというか、ポジティブというか、なんでも斜に構えてしまう僕とは180°ちがう。

寅さんが大好きで、わざわざ葛飾柴又に下宿していたっけ。デザインの仕事は深夜までかかる。午前2時頃にシャワーを浴びて、大家さんに「うるさい」って怒られても「失敗、失敗」って笑っている。

そんなY君は、食べ物の好き嫌いがない。それどころか、なんでも美味しいのだそうだ。

この飽食の時代に、食べ物に感謝して美味しくいただく気持ちは大切だ。見習うべき点は、多々ある。けれども物事には限度というものがあり、クチに合わないものを「美味しい」というのはどうかと思う。

だから、なんとかY君が「まずい」っていう場面を見たくて、ことある事に感想を聞くのだけれど、お腹一杯食べられれば「美味しい」としか言わなかった。この店とあの店、どっちが美味しい?と聞いても、「どっちかなぁ、えーと、どっちだろ? どっちも美味しい」と言う。

突然、その時は来た。

二人で訪れたことのなかったソバ屋で昼食をとった。僕はざる、彼はカレーライスを頼んだ。「Y君、カレーライスって結構冒険なんじゃねーか」。ソバ屋のカレーライスは、たいがいカレーそば用のルーをごはんにかけるから、失敗の可能性が大きい。

カレーライスがY君の前に運ばれてきた。「黄色いなぁ~~、ここまで黄色いカレーは…」

ほんまに黄色なんである。茶色でも、黒でも赤でもなく、黄色なのだ。Y君はひとさじ、クチに運んだ。僕は「どう?」と聞いた。Y君はもうひとさじ、クチに入れて咀嚼して味わっている。

…。


Y君「カレーと思わなければ、美味しい」

なんやねん、それ。…一口食ったら「塩辛いターメリックスープかけごはん」だった。Yよ、まずいと正直に言えることも重要なのだよ。

彼から久しぶりに葉書が来た。子供が生まれたそうだ。君なら良いお父さんになれるよ。でも、食育だけはお母さんに任したほうが良いぞ。あ、彼は今、別のデザイン事務所に移って、男性用料理雑誌のデザインしてるんだった。