アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

ハンドメイドの境界vol.3

制作者がどこまで制作物と関わり、決定権をもっているか。

「ハンドメイド」や「手工的」といった言葉が、一人歩きしている現在、
僕たちはそのメリットは何か、デメリットは何かを知る必要がある、
と思うのです。

個人製作家のギターの場合、多くは受注生産となります。
プロトタイプを弾いて、変更箇所などを伝えて制作されます。
現物を弾いて確認できるシステムではありません。

例外もありますが、現物が完成して気に入らなくても
購入しなければならないのは、楽器であるがゆえのデメリットです。

また、vol.2で記したように、工芸的なものづくりを基調とした
制作家は、同じモノをつくることを良しとしません。
概観はプロトタイプと同じでも、内部構造や使用木材など、
常に改良し、変更を加えます。

結果的に、プロトタイプと全く同じ音になるとは限らないのです。
そればかりか、改良自体が「成功した」とはいえないものに
当たる可能性も否定できません。

「工芸作品」も、「個人製作家のギター」も突き詰めれば、
作家個人と発注者の信頼関係によって成立しているのです。

例えば、芸術家に「3年前のこの作品が気に入ったから、
全く同じモノをつくって欲しい」と注文するとします。
果たして、芸術家はそのような注文を受け入れるでしょうか?

「要望の傾向」を理解する手掛かりにはなっても、
「全く同じモノを作れ」というのは横暴以外のなにものでもありません。
このような発注者の発言は、制作者の「3年間」を無視した発言です。

制作者を信頼して、「この方向で、今一番良いと思うものを作って欲しい」と、
いうべきです。また、それができないのであれば、個人製作家のギターを
発注すべきではない、と思うのですがいかがでしょうか。