アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

自殺のあった教室で

今回も僕が体験した話だけど、めずらしくオチがあるから。

ほにゃらら大学教育学部の美術講座には、不思議な構造の教室があった。
やけに教室が長いのだ。普通の講義室の1.5倍の長さ。

新入生と2年生はゼミが決まっていないので、この教室で数々の実技課題をこなすことになる。
そして、課題制作はおうおうにして徹夜作業になる。
そんなとき、決まって上級生が後輩に切り出すのだ。
「この部屋の構造って不思議だと思わないかい?」と。

この部屋には入り口が3カ所あって、後ろと真ん中は他の教室と同じ「引き戸」。
黒板よりの前の入り口だけが「ドア」という構造だ。
実はこの部屋、教官研究室と講義室の壁を取り払った部屋である。

この教官研究室で、赴任して間もない教官が自殺した。

窓枠にネクタイを掛けて、外に乗り出すように首をつっているのを、
翌朝登校した美術の学生が発見したという。
あとに入る教官なんていないから、壁を崩したというわけだ。

部屋の設計ミスを逆手にとったよくある作り話かと思いきや、教官も「そのとおり」といっていた。
ま、美術の教官は愛嬌があるからそのくらいの冗談は言うかもしれない。
しかし、僕がのちに進学した他大学の大学院で教えてもらった教官が、
「君どこから来たの?ああ、あそこ。僕も非常勤に行ったことあるよ。○○先生が自殺しちゃった後任で」
といっていたから、作り話でないのは明らかだ。

さて、昭和から平成に年号が変わる頃、僕は深夜までデザイン室に残って、課題を制作していた。
そこに同級生の女の子Oさんが飛び込んで来た。

O「Jeepく~~ん、11番教室から音がするんやけど~~~」
僕「誰か、おるんちゃうん?」
O「真っ暗なんよ」
僕「まじ!?どんな音?」
O「布がすれるような音」

こ、こえ~~~~~。どうやら美術棟にいるのは、僕とOさんだけらしい。
どうしよう。っつーか、ホラー映画じゃないんだから、別に確認に行く必要ないし。

O「わたし、あの部屋に制作道具おいてるんだけど」
僕「む~~。ほな、い、いくか?」

結局、B級ホラー映画よろしく、行かなきゃいいのに行くハメになる。

そして、例の部屋の前に来た。Oさんは僕の腕をつかんでいる。
Oさんは口の前で人差し指をたて、「静かに、聞いて」とジェスチャ。
黒板よりのドアの手前にさしかかったとき、

ざざざ~~~~~~ざ、ざ~~~

僕「!!」

僕がドアノブに手を掛けると、Oさんは「ダメ、ダメ」とジェスチャする。
明らかにドアのすぐ内側で音がしているから、
少し距離をとって引き戸のほうから開けようという考えらしい。

引き戸まで抜き足で移動した。って、なんでこっちが抜き足になるのか、わからん。
僕は引き戸を開けて、「誰!」と声を上げた。
音が止まる。
Oさんが明かりを点けた。

僕「Yさん?」

絵画ゼミのY先輩が、キャンバスを前にして、手のひらで絵の具を塗っていた。
あ、あのな~~(脱力)。美術には、たしかに変な人がいる。