アコギな雑感

麺とアコギをこよなく愛するデザイナーのブログ

湿度管理あれこれvol.1

アコギストにつらい時期がやってきます。…梅雨。
この2ヶ月ほどのあいだ、ギターの鳴りは明らかに悪くなり、
弦はサビついて寿命が短くなり、また、いつトラブルが起きるか
不安な日々を送ることになります。

そりゃーね、湿度維持できるギター専用保管庫があれば、それに越したことはないですよ。
でも、そんなスペースもお金もナッシング。そんな余裕があれば、箱じゃなくてギターが
欲しい。←あ、またバカ。

そんな僕は、お堀の脇に住んでいたことがあって、もともと湿地だったらしく、夏でも冬で
も湿度70%越え。信じられる?ふつーに暮らしていても、本がガワガワになっちゃう。
そ、学校の帰り道に用水路へランドセルごとはまった子どもの教科書のように。

そのおうちにGibsonやらMartinやら置いていたのですから、湿度には泣かされました。

ギターは45~60%くらいが最適な湿度とされていますよね。

45%を下回るとどうなるか。

ネックは逆ゾリ方向へ、トップは下方へ落ち込むといった状態になります。トップを補強し
ているブレイシング(力木)は、もともと緩やかなアールがつけてあって、トップが弦の張
力によって緩やかに持ち上がっている状態のとき、適正な形状になるように作られています。
ですから、逆方向にトップが落ち込むとブレイシングが耐えられずに剥がれてしまう。ブレ
イシングが剥がれると、最悪の場合、トップが変形して修理不能に。

そのほか、些細なアタックでクラック(木部のひび割れ)が起きやすくなりますし、トップ
板の夏目(比較的白く見える木材の目。夏に成長する部分で水分の含有量が多く、柔らかい)
がやせて(目ヤセ)、塗装のうえからでも木目の落ち込んでいるのがわかるようになったり
します。指板がやせると「フレット浮き」という状態になって、指板とフレットの間に隙間が
発生します。

60%を上回るとどうなるか。

ネックは順ゾリ方向へ、トップは上方へ腫れ上がるといった状態になります。ブリッジを真横
から見ると通常ブリッジ・ピンが垂直もしくは時計1時方向へ傾いていますが、異常に腫れ上
がると時計11時方向へ傾いてしまいます。また、ブリッジのサウンド・ホール側に三角形のた
るみが出ます。トップを光に当てて角度を変えると、三角形の反射光が見える場合は、異常な
トップ腫れが起きているといえます。張力の大きい12弦ギターの中古に散見できます。

通常の持ち上がりを超えた「腫れ上がり」は、やはりブレイシングの剥がれにつながります。
同時に、弦高が極端に高くなり、演奏性が悪くなります。

それほど大きな問題は起きなくとも、高湿度状態は木材の水分含有量が増すことで、振動が抑
制され、鳴りが落ちることはいうまでもありません。

経験上、日本国内で45%以下になることは希です。
たしかに冬場の乾燥期は危険といえば危険です。そりゃね、ストーブ使ってカラッカラにして
たらダメだよ。でも頻繁に45%を下回る乾燥っていうのは、暖房の使いすぎとか生活自体に問
題があるんじゃないかな。家の外は乾燥していても、お家の中をそこそこ暖めて、人間が生活
していれば(人間の呼吸はおもいのほか加湿効果がある)極端な状態にはなりません。
っていうか、僕が乾燥地域に住んだことがないだけかな?

ですから、僕にとっては60%越えの湿度のほうが大問題なわけです。

次回は梅雨対策の実際について書きます。待っててね。